復興は私の使命

東日本地震・津波災害の復旧・復興にむけての私見

 4月11日で東日本地震津波災害の発生から一ヶ月が経過しました。
  ここに改めて犠牲となられた方々のご冥福をお祈りいたしますとともに、被災者皆様に心よりお見舞いを申し上げます。
  発災以来、大変な国難の中、市町村・自衛隊・警察・消防・海上保安庁を始めとする関係機関のご努力により瓦礫も少しずつ片付けられてきました。
  しかし、3.11以前の状況に近づくには、まだまだ長い時間が必要です。今はまだ被災地の復旧に万全の対応が求められる段階ですが、一方でそろそろ復興にむけての基本的な哲学をきちんと定め、それに基づいたグランドデザインの策定を考えなければならない時期になったと思います。
  この一ヶ月、私は被災者の皆さん、市町村長さん、漁業関係の方々から復旧に向けての現状の課題、復興にむけての将来への思いをお聞かせ頂きました。そのことを踏まえ、復旧への課題と復興への展望を私見ではありますが述べたいと思います。

 

「東日本地震・津波災害の復旧・復興にむけての私見」

鈴木俊一

復旧への課題

 発災後の現地での課題は時間の経過とともに変化する。

  1. 発災直後は何と言っても生存者の救出、被災者の安全確保である。生存者の救出は72時間が一つの目安と言われている。今回の場合は、津波による被災地域が三陸全域の広範囲にわたり、各々の地域においても道路が遮断されてしまったため、陸上からの救出が容易ではなく、ヘリコプターによって多くの孤立した人々が救出された。
  2. また、津波災害という性格上、海上での救出も考えられ、陸・海・空からの生存者救出が出来るような機動力の整備・充実が課題として残った。

  3. 避難所に避難した被災者への対応は、今日なお不十分である。
    ことにも、生存に関わる水・食料・衣類(下着・靴下)等の物資は発災直後に比べれば改善されつつあるが、引き続いての対応が必要である。
    食料も当初はおコメの確保が第一であったが、時間の経過とともに味噌・醤油などの調味料、副菜など幅広い食品調達の対応が求められている。
     
  4. 在宅の被災者への対応も必要だ。幸い家屋の全壊を免れて、辛うじて家に戻り生活をする被災者も食料・水を始めとする生活物資が不足していることには変わりはない。
     
  5. 発災後一ヶ月経過した今も、電気・水道・ガスといったライフラインの復旧が課題である。とくに発災後暫くの間、固定電話、携帯電話が不通になり、情報伝達が円滑にいかないため、あらゆる復旧作業や安否確認に大きな支障を与えた。
    今後、少なくとも県と市町村を結ぶ衛星通信など災害時でも確実に連絡が取り合えるシステムを整備することが必要である。
     
  6. 瓦礫の処理については超法規的な対応が必要である。極めて大量の瓦礫をきちんと分別収集したりすることは実態として困難だ。また、限定的に野焼きを認めること、あるいは港湾計画などが既にある所は埋立てに瓦礫を活用すること等、臨機応変の対応が求められている。
    また、瓦礫の撤去に当たっては自衛隊の果たしている役割は大変大きいものがある。しかし、自衛隊の活動は原則、民間事業の及ばない範囲とされ、犠牲者の収容に伴う瓦礫撤去や公共施設の撤去などに制約されている。
    大災害時の自衛隊の活動に、より柔軟性を持たせる必要があるのではないか。

  7. 犠牲者の収容に関しても棺や骨壺の絶対数が不足しており、また、火葬もままならない状況にある。さらに、身元の確認も時間の経過とともに難しくなっている。犠牲者の尊厳を守りながら火葬・埋葬を進めなければならない。
     
  8. 仮設住宅の設置は早期に進めなければならない。避難所での生活も一ヶ月に及び、体調を崩す被災者も少なくない。また、プライバシーの問題もあり、仮設住宅への入居を希望する人は多い。仮設住宅設置が遅れると、高齢者の多い三陸では人口流出につながりかねない。資材の不足はあるとは言え、被災者が三陸の地での将来設計を立てられるようにタイムスケジュールを示すなど、計画的な設置を進めることが重要だ。
     
  9. 仮設住宅設置までの間の県内・県外への一時移住については、要介護者・高齢者・病弱な方への配慮が必要である。長い距離を時間をかけて移動することが可能なのは、比較的元気な方々であり、弱い立場の方々が避難所に長時間留まることにならないような対応も課題だ。
     
  10. 通常的生活に移行するには、その立ち上がりに経済的支援を行うことが不可欠である。「被災者生活再建支援法」に基づく支援金や「被災者生活再建支援基金」など自民党政権下で作られた既存の法律、制度を早期に発動するとともに、その充実を図ることが必要と思う。
    また、三陸沿岸の基幹産業である水産業の再建に当たっては、先ず、生産手段である漁船・漁具を確保しなければならない。立ち上がりの時期は漁協を主体とした協業化で始めざるを得ないだろう。また、大きな被害を受けた漁港については、最低限の機能である繋留機能の回復から進めるべきで、これまた当初は拠点漁港を選択して復旧せざるを得ないと思う。
    水産業の再建には通常時の融資での対応では無理であって、漁船の無償リースや漁協への公的資金の投入などの思い切った対策が必要である。
     

復興への展望

 かって、阪神・淡路大震災では、神戸市を中心に多くの被害があり、その復興には大変な努力がなされたところである。災害復興に向け「被災者生活再建支援法」を始めとする立法措置もなされ、被災地は見事に復興することが出来た。
  しかし、阪神地区は元来、経済的に活発な地域である。市場原理にまかせていても会社は再建され、民間資金も流入し、国の支援もさることながら民間の活力によって復興を進めることが出来た。
  一方、三陸沿岸地域は水産関連産業(漁業・水産加工業・造船業・製函・運送業・市場等その他関連業)が地域経済の柱である。いずれも中小零細企業中心の産業構造であって民間の活力による復興の力は極めて小さい。
  さらに、被災地の方々の高齢化は進んでいて、家を失った今、改めて住居を新築しようとする人々は多くなく、少なからざる方々が身を寄せられる所へ移り住んでしまいかねない。
  市場原理に任せ、あるいは成り行きに任せていれば阪神地域と異なって、地域経済の復興は進まず、地域コミュニティーも崩壊してしまう恐れがある。
  以上のことを踏まえれば、三陸復興は国家プロジェクトとして「三陸復興から新しい時代に即した国づくり」を始めるくらいの決意をもって臨む必要があると思う。

  1. 復興に当たっての基本的哲学を定めることが大事である。私は「三陸の復興を新しい国造りにつなげる」ことが必要と思う。何故ならば、今回の被災地は年齢構造等において、今後国全体で顕在化する構造的問題が先行して現れている地域だからである。
     
  2. 基本的哲学を具現化するために、復興に向けてのグランドデザインを策定する必要がある。例えば、大きなところでは産業の配置をどうするか(豊かな水などの自然資源を活かし、更新期を迎えたプラントの誘致や製薬などの先端産業の立地など)を策定する。
     
  3. グランドデザインに基づいた各々の計画を実施するためには、権限をもった行政組織が必要と思う。屋上屋を重ねるという意見もあるが、戦後の復興院に倣った時限的行政組織が必要ではないか。
     
  4. 復興を進めるには、確かな財源が必要である。そのためには、民主党政権下で行われているバラマキ政権の停止、すでに経済大国とも言える中国等に対するODAの見直しなどを徹底的に行い、足らざるところは国債の発行もやむを得ないと思う。

以上、この一ヶ月の間、悲惨な被災地の状況を目の当たりにし、また、関係各位からの様々なお話を伺い、私なりに当面の思いをまとめてみました。
三陸沿岸の復旧・復興には長い年月がかかると思いますが、今後とも皆様のご指導も頂きながら、私として全力で取り組んで参る決意です。
 

2011.4.11

 

 

 

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