復興は私の使命

6月18日 三陸水産業再興へむけての私見

 6月18日で東日本大震災の発生から早くも100日が経過いたしました。ここに改めて犠牲になられた方々のご冥福と被災者皆様に心からなるお見舞いを申し上げます。
  私の郷里山田町をはじめ被災市町村ではいまだ行方不明者の捜索、瓦礫の処理、電気・上下水道・ガス等のライフラインの復旧、避難所生活を余儀なくされている方々への対応、仮設住宅の建設など復旧に向けての取り組みが継続されています。この間、地元市町村をはじめ自衛隊、海上保安庁、警察、消防などの関係機関の大変な尽力に、また、被災地に寄せられた全国さらに外国からの善意に深く敬意と感謝を申し上げます。
  まだまだ厳しい環境にある中でも被災地では、生活再建に向けて動き出しています。この地域の産業の柱は水産業であります。この地域の復興に大きな意味を持つ水産業の再建について私見を述べたいと思います。

 

「三陸水産業再興へむけての私見」

2011.6.18    鈴木俊一

 東日本大震災とそれに伴う大津波によって三陸沿岸は未曾有の被害を受けた。この地域の経済を支える主要産業は水産業であり、被災地の経済の復興は水産業の再建なくしてはあり得ない。
今回の大津波によって三陸の水産業は生産手段(漁船・漁具)の喪失、生産基盤(漁港・産地市場)の破壊、さらに製氷工場・冷蔵庫・水産加工場・造船場など関連する全ての施設が壊滅的な被害を受け、再建が危ぶまれる瀬戸際にまで追い込まれている。
三陸水産業の再興にむけては、決して従来の施策の枠内にとらわれることなく、各々の地域の実態を基本とし、財政面では国・県が全面的に支援することが不可欠である。

(Ⅰ)再建の立ち上がり期の課題

    ◎ハード面の復旧・整備

  1.  水産業を再起動するに当たっては生産(漁撈)部門だけではなく、産地市場機能の回復~氷の確保~水産加工業の再建~冷蔵庫の再建など生産から販売、流通に至る各部門トータルの復旧(そのレベルは当初は低いものであっても)を進めなければならない。
  2.  漁船・漁具などの生産手段を確保することは最も基本的かつ重要な課題である。
    第1次補正予算で漁船を取得する際の自己負担が圧縮されたことは評価できるが、定置網などの漁具については協同組合経営以外の経営体に対しても協同組合と同等の助成がなされるべきである。
  3.  かつお・まぐろ、底曳きなどの漁船については従来のリース事業の拡充を行うとともに、小型漁船についてもリース事業の適用・普及について検討を行う必要がある。
  4.  漁港・産地市場といった生産基盤について、その集約化が検討されているが、これは誤りである。
    被災漁村で行われている漁業(漁法)は当然のことながら一様ではなく、各々地域によって異なっている。地先のアワビ・ウニ・ワカメ・コンブなどの磯根資源を対象とした漁業は「サッパ船」を使用しており、浦々の漁港がなければ成り立たない。
     漁港は近年、高齢就業者に対応した設備(浮き桟橋・スベリ材を使った船揚場)や漁獲物の衛生管理のための清浄水の導入など機能が多様化してきたが、その復旧初期に当っては先ずは漁港の基本的な機能である「安全な出入港と繋留機能」を確保するため、航路・港内の瓦礫の撤去を急がなければならない。
  5. 製氷工場・冷蔵庫・水産加工場の復旧は時間を要するが、他の部門に遅れを取らぬよう着実に進めなければならない。そのためには国庫助成の対象を事業協同組合だけではなく個人の企業体へも拡げることが必要である。
  6.  津波によって栽培センター、アワビ・ウニなどの種苗生産施設、鮭鱒増殖施設が壊滅的な被害を受けた。
      それぞれの施設で生産される稚魚・稚仔には生産及び放流の時期が定まっており、継続してきたサイクルが途切れることのないように時期を見定めた復旧を行わなければならない。
     鮭の増殖事業については孵化場の復旧だけではなく、放流河川の環境回復にも十分留意する必要がある。
  7.  このほか、造船工場(修理工場)、魚凾(製凾業)、保冷運輸など水産業に広く関連する事業に対する政策的な配慮も忘れてはならない。

◎制度・政策・予算執行などソフト面の課題

  1.  今後の2次・3次補正予算の執行にあたっては漁期との関係から事前に着手したもの(漁船・漁具の発注、養殖施設の設置・種つけなど)についても遡及して対象にするなど柔軟な対応をすること。
  2.  立ち上がり期における操業形態は漁船・漁具の確保が困難な実情から漁業協同組合を主体とした共同就業を考えるべきである。
     ただし、漁業の基本は個人が主体の漁撈活動であり、出来るだけ早い時期に個々の漁業者が生産手段(漁船・船具)を取得し、自立した漁撈活動が出来るような助成措置が必要である。
  3. 漁業再建の立ち上がり期の主体は漁業協同組合でなくてはならない。壊滅的な被害を受けた漁協に対し、組合員の新たな出資を求めることは不可能であり、漁協の再建のために公的資金による増資を検討すべきである。
  4. カキ・ホタテ養殖など種つけから漁獲まで概ね3年を要する漁業については 2~3年の収入が見込めない厳しい状況にある。これら漁業を再生産するためには、漁業関連(漁具の整備、漁場・漁港からの瓦礫撤去、漁場清掃、藻場・干潟づくり、漁業資源回復作業など)の就業を幅広く認定し、国・県・市町村からの就労賃金を支出するなど、当面の収入を確保すること。

(Ⅱ)本格復興期

  1.  震災後の様々な提言の中で漁業分野への株式会社の積極的な参入により漁業再建を図るべきとの議論があるが、これは誤りである。農業と異なり水産業では戦前から資本漁業が存在し、今日でも漁船漁業の多くは会社経営であり、事実誤認の議論も目につく。
     今、提言されている企業参入は新たな分野(異業種企業)からの新規参入という意味であれば企業の営利追求と漁業資源の持続可能性との間の問題に危惧せざるを得ない。
  2.  前述したとおり、漁業の基本は個人が主体の漁撈活動であり、本格復興にあたっては本来の姿に戻さねばならない。そのためには漁船・漁具に対する補助制度を充実させなければならない。このこと(漁業補助金)についてはWTO協議の場においても従来の我が国の立場が後退することがないよう、しっかり主張しなければならない。
  3.  漁業生産基盤である漁港・漁場・産地市場については、全面的な復旧を行わなければならない。
     漁港については漁撈活動再建の進捗に応じて必要とされる漁港機能を高めていかねばならない。
  4.  製氷工場・冷蔵庫・水産加工場・造船場などの関連施設に対しては、政府系金融機関による支援をしっかりと行う必要がある。

(Ⅲ)その他(漁村の再建)

  1.  被災各県の再建はただ単に旧に復するだけではなくて、新たな国づくりのビジョンの中で行われるべきである。
     岩手県については歴史的な水産県として、先進的な水産研究機関を集中的に設置し、国内だけではなく世界に向けて水産分野の研究・技術開発が発信できるような県(地域)づくりを目指すべきである。
  2.  戦後60年かけて営々と築いてきた防波堤・漁港・漁村集落が消滅してしまった。漁村を復興するために、今回の大災害をしっかりと検証したうえで、十分な防災機能をもった防波堤・漁港の再整備を行うとともに漁業活動の利便性も配慮した高台への集落移転を行い、安全で安心して暮らせる漁村を再建しなければならない。

2011.6.18

 

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