10月31日 平成23年度第3次補正予算(厚生労働省関係)について

 3・11に発生した東日本大震災からまもなく8ヶ月が経過しようとしています。被災地では避難所での生活から仮設住宅の生活に変わり、また、一部ではありますが仮設店舗での商店等の営業再開など、生活再建への動きも日々力強さを増しています。
  しかし、一方においては、厳しい就業状況の中での収入の問題、心身にわたる保健の問題等々時間の経過とともに顕在化する問題も出てきています。
震災に対する国の対応は遅く、7ヵ月半を要してようやく実質的な復興策を盛り込んだ第3次補正予算が国会に提出されました。この補正予算のうち生活に関りの深い厚生労働省関係の予算について被災地の実情を踏まえ私の思いをまとめました。

2011.10.31

 

「被災地から見た、平成23年度第3次補正予算
              (厚生労働省関係)の課題について」

2011.10.31 鈴木 俊一


 3月11日に発生した東日本大震災の発生から8ヶ月が過ぎようとしている。私の地元岩手でも発災直後の大混乱の状況からようやく生活再建への動きが始まっている。
 しかし、その足取りは重く、軽やかなものではない。16年前に我が国を襲った阪神淡路大震災と比較した時、復興に向けての状況はいくつかの点で決定的に異なっている。
 その一つは阪神地区は元来経済的な基盤が厚いのに対し、三陸沿岸地区の基幹産業は水産業であって、経済的基盤が脆弱であることである。一例をあげれば16 年前の大震災によって阪神地区においては多くの企業体の支店・営業所といったのもが倒壊したが、それらは企業活動にとって必要不可欠なものとして必ず再建 された。
言わば民間経済力の自立的な力が復興に向けて大きな力を発揮した。
 一方、三陸沿岸では企業再建の動きは鈍く、むしろこれまでに苦労して誘致した企業は撤退・移転の動きがあって復興に向けて民間の経済力が寄与する力は極めて小さいものである。
 その二つは、年齢構成の違いである。阪神地区と比較して、三陸沿岸地区は高齢化が進んでいて将来的な生活設計が立ちにくい状況から、既に人口流出が始まっている。
 阪神淡路大震災と比べ、今回の東日本大震災の復興には何と言っても国の大きな支援が必要であり、それだけに平成23年度の第3次補正予算の早期成立が期待 されるところである。未曾有の災害への対応には与党も野党もなく、協力してこれに取り組まなければ政治の責任は果たせない。復興対策が遅れている一義的な 責任はもちろん民主党政府にあるが、自民党としても復興債の償還期間等、基本的な哲学の違いがあるにせよ徒に成立を遅らせないように対応することが望まれ る。


◎    第3次補正厚労省関係の主な項目と被災地から見た問題点

①    地域医療提供体制の再構築
今回の大津波災害によって沿岸部の病院・診療所等の医療関係施設は壊滅的な被害を受け、医療提供体制は未だ整っていない。発災直後は全国から医師をはじめ とする医療関係者がボランティアとして被災地に入り、大きな力を発揮したがそれらの医療関係者が本来の職場へ戻り始めていることから、足下の医療提供体制 を確保するとともに今後の中・長期的展望に立った医療提供体制を確立しなければならない。
第3次補正予算案では
(イ)民間を含む被災医療関係等の再整備を進め、医療機能の分化、集約・連携を行い、具体的には
・    機能強化を行う病院と後方支援病院との機能分化
・    診療所の在宅当番区制への参加
・    在宅医療の推進
(ロ)医療機関相互の情報連帯の基盤整備
(ハ)医師・看護師等の人材確保
を進めるとして720億円が計上されている。
しかし、現場では例えばこれまで苦労を重ねて運営してきた市民病院等を新たに医療提供体制の中で後方支援病院にすることへの抵抗感等もあり、新たなシステム作りには地域住民の利便性の観点も含め十分な合意形成が必要である。

②    医療機器創出を通じた東北地方の再生
被害地の復旧・復興にあたっては、ただ単に旧に復するのではなく、新しい国づくりの拠点として復興させるという視点が重要である。第3次補正予算案におい ても、「東北地方で革新的な医療機器の創出を通じて、企業誘致及び雇用創出を図り、地域経済活動を再生するため、税制措置や薬事規制の緩和等を組み合わせ た「復興特区」構想を推進する」ための予算が43億円計上されている。被災地の沿岸部を含め東北地方には医療機器のみならず製薬についても条件にかなう地 域はあるはずであり製薬・医療機器関連企業の立地に国策としてのバックアップを期待したい。

③    被災者の健康の確保
被災地においては概ね8月中に仮設住宅が整備され被災者の方々も新たな生活に入っている。避難所から仮設住宅に変わり生活環境の変化に伴って新たな問題も 発生している。その一つは自立した生活が基本の仮設住宅での生活では避難所生活に比べ十分な保健指導が受けにくいこと。二つには雇用環境が非常に厳しく生 計の維持に多くの方々が苦労していることである。
 このうち仮設住宅での生活の長期化による健康状態の悪化を防ぐために保健・栄養・食生活についての巡回指導を行うことが予算化されている(29億円)。 予算案ではそのマンパワーとして保健師の資格を有しながら現在職に就いていない潜在保健師を活用するとしているが、この際、私はこれに加え長野県で最初に 制定された「保健指導員」制度を被災県でも導入し、巡回指導にあたらせることが必要と考える。
 それは二つ目に述べた被災地での雇用環境が厳しい中で、比較的簡易な講習で「保健指導員」を認定することにより、少しでも多くの方々に就労の機会を拡大し収入の確保を図るとともに本来の目的である被災者の健康確保に資することが出来ると思うからである。
 なお第3次補正予算においては被災地での就業を促進するため、「緊急雇用創出事業臨時特例基金」の積み増しとして被災地の高齢者・障害者・生活困窮者に対する支援を行う、NPO法人による巡回訪問「生活再建サポーター」の配置などが盛り込まれている。(202億円)

④    被災者の心のケア
何百年、あるいは千年に一度という未曾有の津波災害を目の当りにした方々の精神的なショックは8ヶ月の月日を経過しても未だ解消されていない。被災後の生 活も避難所生活→仮設住宅生活という大きな環境変化に加え、就労していた事業所の閉鎖による失業等、様々な困難に直面している人々が多く、身体だけではな く心のケアの対応も緊急かつ重要な課題となっている。
第3次補正予算においては、心のケアに対する保健所での相談対応・
看護師等による仮設住宅への訪問支援「心のケアセンター」の設置などの事業が組まれている。



以上、私が3・11以来、地元の被災地で活動する中で切実に思い感じている諸問題とそれに対応した第3次補正予算に盛り込まれている主な事業を述べてきた。
被災地の実情からするとまだまだ不十分な内容ではあるが、第3次補正予算が提出されるまで7ヶ月半要した、正に遅きに失した状況においてはともかく一日 も早く第3次補正予算を成立させることが求められている。そして予算執行段階においては私が指摘した被災現場の実状に十分配慮した柔軟な運用を強く望むも のである。

 

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